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大阪高等裁判所 昭和36年(く)32号 決定 1961年8月09日

少年 Y(昭二一・九・一九生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件の抗告理由第一点は、本件の審判は保護者たる両親出席の上開始されたが一言の弁明の機会も与えられなかつたもので少年法第二二条の主旨に違反するというのである。

しかしながら本件記録中昭和三十六年六月十三日の審判調書の記載によると少年の両親が出席した上御寛大な処分を願いますという意見を陳述していることを認めることができる。附添人所論の如く一言の弁明の機会をも与えなかつたものとは考えられない。所論は理由がない。

本件抗告理由第二点は、原決定には重大な事実の誤認がある。

原決定の認定した恐喝の点は単純な貸借関係であり、昭和三十六年一月二十八日の窃盗の点は他の少年の持ち来つたものを乗り廻したものにすぎず、同未遂の点は乗り廻して元の位置に返すつもりであつたので不法領得の意思がなかつたものであるというのである。

所論に鑑み、記録を精査するも原審の認定した各非行事実は本件記録の関係証拠を綜合すれば優にこれを認定することができ何等事実の誤認はない。恐喝の点は所論のように単なる貸借関係に止まるものとは到底考えられないし、昭和三十六年一月二十八日の窃盗はNと共謀の上少年自ら合鍵を用い運転して窃取したものであつて、他の少年が持ち来たつたものを乗り廻したものではない。また窃盗未遂の点は乗り廻した上乗り捨てにする意思であつたものと認められるから不法領得の意思を認めるに十分である。所論は理由がない。

ただ原決定は暴行の非行事実を認定していないのにかかわらず適用法条に刑法第二〇八条を挙示している点は法令の適用を誤つたものといわなければならないが、その瑕疵は決定に影響を及ぼさないものと認められるから原決定を取消す理由とはならない。

抗告理由第三点は要するに、本件少年を両親の膝下において指導せしめるのが相当であるのに拘らず原決定が少年院送致の決定をしたのは不当であるというのである。

よつて記録を精査検討すると、少年は昭和三十五年八月二十日頃から同年十月一日頃までの間六回に亘り窃盗を犯した件につき、昭和三十六年一月二十一日神戸家庭裁判所尼崎支部において保護観察に付する旨の処分を受け、保護司と保護者の指導に期待をかけたにもかかわらず、悪友との交友関係を絶ちきれず、同月二十八日軽自動車一台を盗み、同月二十二日父親が少年の好むテレビ番組を見せてくれようとしなかつたということで家出をして窃盗の非行を重ね、同年四月から父親と共に働に出ていたが、家が面白くないといつて再び家出し、同年五月十七日及び同月十八日窃盗、同未遂の非行を犯すに至つたものである。家庭環境を見ると父は鳶職として真面目に勤務し、母は家庭にあつて少年を監督し、姉弟に非行歴を有するものはおらず、家庭環境に特別悪い点を指摘することはできないが、母親が中学校の担当教師と連絡をとり熱心に少年の監督に努め、本年四月からは父親が自分の仕事場に少年を連行して監督するという方法をとつたにもかかわらず、少年は不良交友を絶ち切れず家出と非行を繰り返して来た前記実情に照らすときは、両親の監督保護下における解放的な保護処遇によつては、もはや少年の改過遷善を期待することは不可能であるといわなければならない。しかも父親が仕事場に連れて行くというのであつては少年に対し義務教育すら満足に受けさすことができないこととなることを思えば、この際少年を国家の施設に収容し強力適正な矯正教育を施し、悪友との関係を絶ち規律ある生活態度を体得させることが適切妥当な措置であるといわなければならない。従つて原決定の初等少年院送致の処分は相当であつて不当であるとは思われない。

よつて少年法第三三条第一項に則り主文のとおり決定する。

(裁判長判事 児島謙二 判事 畠山成伸 判事 松浦秀寿)

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